【おもしろ韓国語講座 #034】 소백산맥(小白山脈[焼百山麦])
2006年 05月 08日
かといって、こっちの人がお酒に強いのかといえば、必ずしもそうではないんです。まぁ、「酒に強い」をどう定義するかによるんですが、僕の考えでは、お酒を飲んで完全に酔っ払ってしまって、自制が効かなくなっちゃう人は、どんなに底なしに飲めても「強い」とはいえない、まあそういうことです。
韓国人は、男の人も女の人も、飲みっぷりは日本人よりもはるかに豪快ですが、酔いっぷりもハンパじゃありません。韓国で「酒が強い」とは、まさに「たくさん飲める人」のことなんです。
そんなわけで、韓国には酒の強さ(ここでの「強い」は自制よりも量を指す)を競うために生まれた、数々の「オリジナルカクテル」が存在します。一番有名なのは、ビールとウィスキーを混ぜた폭탄주(ポッタンジュ:爆弾酒)」というやつです。今も昔も、2次会や3次会になると、必ずといっていいほど登場する、「夜のスタンダード・メニュー」です。
2000年前後には、大学生を中心に「타이타닉(タイタニッ:タイタニック)」というビールの飲み方が大きな支持を受けました。「タイタニック」とは、ビールの中ジョッキ(500ml)の中に空の焼酎の杯を浮かべ、ビールの中に浮かんだ杯の中に各自順番に焼酎を注いで回していきます。そうすると、杯は重力の法則に従い、だんだん下へ下へと沈んでいきます。そして、ある人がその杯に焼酎を入れた瞬間(あるいは、ジョッキを隣の人に回す途中)、杯はゆっくりとジョッキの底へと沈んでゆき、杯の中の焼酎は鮮やかな泡と化し、ビールと一体になります。そう、まさにビールが「海」で、焼酎の杯が「沈みゆくタイタニック号」というわけです。船を沈ませた人は、その罰として、タイタニック号の眠るビールの海をイッキに飲み干さなければなりません。
「タイタニック」だけではもの足りない韓国人は、次に「오십세주(オシプセジュ:五十歳酒」という、これまたとんでもないものを考え出しました。薬酒の一種である「백세주(ベクセジュ:百歳酒)」と焼酎を一瓶ずつ丸ごと混ぜてひとつの酒にしてしまうんですが、百歳酒の味が半分になるので、「五十歳酒」と名づけられました。これは、けっこうソフトな口当たりで飲みやすいんですが、これを何杯も飲んでいると、そのうち足がフラフラになるほど酔っ払ってしまいます。ところで、この五十歳酒。飲みの席での「非公式」メニューだったのが、最近はなんとどこの居酒屋にも「公式メニュー」として、価格表に名を連ねています!
しかし、これで驚いてはいけません。今回光州へ旅行に行ってきたんですが、そこでとんでもない「カクテル」の存在を知ってしまったんです。その名も「소백산맥(ソベクサンメク:小白山脈)」。韓国には、小説でも有名な「(テベッサンメク:太白山脈)」という大きな山脈があるんですが、この飲み方は、その山脈にかけて名づけられたものです。なかなか文学的な響きがしますが、実はこれ、当て字です。実際には、「소주(ソジュ[焼酎])」の「소(ソ)」、「백세주(ベッセジュ[百歳酒])の「백(ベク)」、「산사춘(サンサチュン[山査春])」の「산(サン)」、「맥주(メッチュ[麦酒]:ビール)」の「맥(メク)」。これで「小白山脈」ならぬ、「焼百山麦」の完成です。読み方はどちらも「소백산맥(ソベクサンメク)」。
もちろん、こんな恐ろしいお酒は、僕も飲んだことがありませんし、まだ飲んでいるのを見たこともありません。それにしても、これから数年後には、いったいどんな「カクテル」が登場するのか、考えただけでも恐ろしくなってしまいます。