【ソウル映画演劇鑑賞記 #003】 「地下鉄1号線」
2006年 04月 18日
このミュージカル、確かに面白いです。もう少し正確に言うと、見れば見るほど、知れば知るほど面白い、そんな作品です。もちろん、曜日によっては英語か日本語の字幕があるので、字幕を追いながら劇を楽しむこともできます。でも、朝鮮戦争と南北分断、軍事独裁と民主化運動、経済成長と貧富格差の拡大、さらにはこのミュージカルを作った金敏基という人そのものを理解することなしに、このミュージカルが真に言わんとすることを理解するのは難しいというのが、率直な感想です。
そういう意味で、「地下鉄1号線」は「NANTA」のようにあらゆる人が気楽に楽しめる作品ではないかもしれません。だから、面白いと思う人と、つまらないと思う人と、評価が別れてしまうのも仕方がないと思います。でも、すべてのミュージカルが普遍的な楽しさを追求する必要はないと思います。「地下鉄1号線」が3000回を超えるロングランを続け、ソウル市民に愛され続けているのは、この作品が持つ性格を考えれば十分納得できるわけで、逆に世界中で大変好評だったというのが、むしろ意外だと言えるかもしれません。
初演から10年以上が過ぎましたが、この間、ソル・ギョングやファン・ミンジョン、チョ・スンウといった、今やスターとなった俳優たちが、この作品から巣立っていきました。メンバーが常に交代しながら、常に質の高いパフォーマンスを維持し続けているというのは、本当に驚くべきことだと思います。
1度観て、韓国についてちょっと調べてみて、そしてまた観て……。「地下鉄1号線」は、そんな息の長い楽しみ方がピッタリの作品です。
(写真は仙女役のチェ・ソンヒさん、舞台終了後の通路で)
オフィシャルサイト(韓国語・英語)